栄養学
栄養素の働きと健康を学ぶ科目
栄養学は、人体の健康を維持・増進するために必要な栄養素の働きや、食事と健康の関係を学ぶ科目です。 三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)、ビタミン、ミネラル、水の働きと、 消化・吸収のしくみ、ライフステージごとの栄養管理などが出題されます。配点は15%です。
1栄養と健康
栄養とは
栄養とは、生物が外界から食物として物質を摂取し、それを利用して生命活動を 営むことをいいます。摂取する物質そのものを「栄養素」といいます。 人体は栄養素を利用して、エネルギーの産生、体の組織の構成、体の機能の調節という 3つの働きを行っています。
栄養素の種類
炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3つ。エネルギー源となる栄養素です。
三大栄養素にビタミンとミネラル(無機質)を加えたもの。 ビタミンとミネラルは体の機能を調節します。
五大栄養素に水を加えたもの。水は体内で最も多い成分です。
人体の構成成分
人体は水分が最も多く、成人では約60%を占めます。次いでたんぱく質が約16〜18%、 脂質が約14〜18%、ミネラル(無機質)が約5〜6%、糖質が約0.5%を占めています。
| 成分 | 割合 |
|---|---|
| 水分 | 約60% |
| たんぱく質 | 約16〜18% |
| 脂質 | 約14〜18% |
| 無機質 | 約5〜6% |
| 糖質 | 約0.5% |
食事摂取基準
日本人の食事摂取基準は、厚生労働省が5年ごとに策定しています。 現在は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が使用されています。 エネルギーと各栄養素の摂取量について、推定平均必要量、推奨量、目安量、 耐容上限量、目標量などの指標が設定されています。
集団の50%が必要量を満たす摂取量
ほとんどの人(97〜98%)が必要量を満たす摂取量
十分な科学的根拠がない場合に設定される目安の摂取量
健康障害のリスクがないとされる習慣的な摂取量の上限
生活習慣病の予防を目的とした摂取量の目標
試験のポイント
- ・栄養と栄養素の違いを理解する
- ・三大栄養素、五大栄養素、六大栄養素の構成を覚える
- ・人体の構成成分で最も多いのは水分(約60%)
- ・食事摂取基準の各指標の意味を押さえる
2栄養素の機能
炭水化物(糖質)
炭水化物は糖質と食物繊維に分類されます。糖質は体内で分解されてエネルギー源となり、 1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。脳や赤血球はブドウ糖のみをエネルギー源とします。
ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースなど。最小単位の糖
ショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)など。単糖が2個結合
でんぷん、グリコーゲン、セルロースなど。多数の単糖が結合
食物繊維は人の消化酵素では消化されにくい成分で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に 分類されます。腸内環境を整え、便通を改善する働きがあります。
脂質
脂質は1gあたり約9kcalのエネルギーを産生し、三大栄養素の中で最も高いエネルギー効率を持ちます。 体脂肪として貯蔵され、細胞膜の構成成分やホルモンの材料としても重要です。
動物性脂肪に多い。常温で固体。摂りすぎはLDLコレステロールを増加させる
植物油や魚油に多い。常温で液体
体内で合成できず、食事から摂取が必要。リノール酸、α-リノレン酸など
コレステロールは細胞膜やホルモンの材料として重要ですが、過剰摂取は動脈硬化の 原因となります。LDL(悪玉)とHDL(善玉)のバランスが重要です。
たんぱく質
たんぱく質はアミノ酸が多数結合したもので、1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。 筋肉、臓器、皮膚、髪、爪などの体の組織を構成する主要な成分です。
体内で合成できず、食事から摂取が必要な9種類のアミノ酸。 バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、 トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン
食品たんぱく質の栄養価を示す指標。必須アミノ酸のバランスで評価。 卵、牛乳、大豆などはアミノ酸スコアが100で良質なたんぱく質
ビタミン
ビタミンは体の機能を調節する栄養素で、微量で効果を発揮します。 体内ではほとんど合成できないため、食事からの摂取が必要です。 脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分類されます。
| 分類 | ビタミン | 主な働き | 欠乏症 |
|---|---|---|---|
| 脂溶性 | A | 視覚、皮膚・粘膜の維持 | 夜盲症、角膜軟化症 |
| D | カルシウム吸収促進 | くる病、骨軟化症 | |
| E | 抗酸化作用 | 溶血性貧血 | |
| K | 血液凝固、骨形成 | 出血傾向 | |
| 水溶性 | B₁ | 糖質代謝の補酵素 | 脚気、ウェルニッケ脳症 |
| B₂ | エネルギー代謝の補酵素 | 口角炎、口内炎 | |
| C | コラーゲン合成、抗酸化 | 壊血病 | |
| B₁₂ | 赤血球の形成 | 巨赤芽球性貧血 |
ミネラル(無機質)
ミネラルは体の構成成分や機能調節に必要な栄養素です。 体内で合成できないため、食事からの摂取が必要です。
| ミネラル | 主な働き | 欠乏症・過剰症 |
|---|---|---|
| カルシウム | 骨・歯の形成、筋収縮 | 骨粗しょう症 |
| 鉄 | ヘモグロビンの構成成分 | 鉄欠乏性貧血 |
| ナトリウム | 体液の浸透圧調節 | 過剰で高血圧 |
| カリウム | 神経・筋肉の機能維持 | 脱力感、不整脈 |
| 亜鉛 | 酵素の構成成分、味覚維持 | 味覚障害、成長障害 |
水
水は体重の約60%を占め、体内で最も多い成分です。栄養素の運搬、体温調節、 代謝反応の媒体など、生命維持に不可欠な役割を果たします。 成人は1日に約2.5Lの水分を必要とします。
試験のポイント
- ・三大栄養素のエネルギー量(糖質4kcal、脂質9kcal、たんぱく質4kcal)
- ・必須アミノ酸の9種類を覚える
- ・脂溶性ビタミン(A、D、E、K)と水溶性ビタミンの違い
- ・各ビタミン・ミネラルの欠乏症を覚える
3栄養生理
消化と吸収
消化とは、食物中の栄養素を体内に吸収できる形に分解することです。 消化には、物理的消化(咀嚼、蠕動運動など)と化学的消化(消化酵素による分解)があります。
消化器官と消化酵素
唾液に含まれるアミラーゼ(プチアリン)がでんぷんを麦芽糖に分解します。
胃液に含まれるペプシンがたんぱく質をペプトンに分解します。 胃液は強酸性(pH1〜2)で、殺菌作用もあります。
膵液(すい液)に含まれる消化酵素が働きます。トリプシンはたんぱく質を、 アミラーゼはでんぷんを、リパーゼは脂質を分解します。 胆汁は脂肪の乳化を助けます。
栄養素の吸収の主要な場所です。小腸の内壁には絨毛(じゅうもう)があり、 表面積を大きくして吸収効率を高めています。
| 消化酵素 | 分泌場所 | 基質 | 生成物 |
|---|---|---|---|
| アミラーゼ | 唾液、膵液 | でんぷん | 麦芽糖 |
| ペプシン | 胃液 | たんぱく質 | ペプトン |
| トリプシン | 膵液 | たんぱく質 | ペプチド |
| リパーゼ | 膵液 | 脂質 | 脂肪酸、グリセリン |
吸収の仕組み
単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)に分解され、小腸から吸収されます
アミノ酸に分解され、小腸から吸収されます
脂肪酸とモノグリセリドに分解され、胆汁酸によりミセルを形成して小腸から吸収されます。 リンパ管を経由して血液に入ります
エネルギー代謝
摂取した栄養素は体内で代謝され、エネルギーが産生されます。 基礎代謝量は生命維持に最低限必要なエネルギー量で、成人男性で約1,500kcal/日、 成人女性で約1,200kcal/日です。
安静時に生命維持に必要な最小エネルギー量。筋肉量が多いほど高くなります。 20歳代をピークに加齢とともに低下します。
身体活動に伴うエネルギー消費量
食事をとることで消費されるエネルギー。総エネルギー消費量の約10%
ホルモンと栄養代謝
膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌。血糖値を下げる唯一のホルモン
膵臓のランゲルハンス島α細胞から分泌。血糖値を上げる
副腎髄質から分泌。血糖値を上げ、脂肪分解を促進
試験のポイント
- ・消化酵素と基質(分解対象)の組み合わせを覚える
- ・小腸が栄養素の主要な吸収場所
- ・インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモン
- ・基礎代謝量は加齢とともに低下する
4ライフステージと栄養
人は一生を通じて、成長・発達・加齢に伴い必要な栄養量や食事内容が変化します。 各ライフステージに応じた適切な栄養管理が重要です。
妊娠期・授乳期
胎児の発育と母体の健康のため、エネルギーやたんぱく質、鉄、カルシウム、 葉酸などを多く必要とします。特に葉酸は神経管閉鎖障害のリスク低減のため、 妊娠前から妊娠初期にかけて十分な摂取が推奨されています。
母乳分泌のため、妊娠期以上のエネルギーとたんぱく質、カルシウム、 ビタミンA・C・Dなどが必要です。水分摂取も重要です。
乳児期
生後1年間は急速に成長する時期です。生後5〜6か月頃から離乳食を開始し、 1歳頃に離乳を完了します。母乳または育児用ミルクから始まり、 徐々に固形食に移行していきます。離乳食は「飲み込む→つぶす→噛む」 という食べる機能の発達を促す役割があります。
幼児期
1〜6歳頃の時期です。身体の成長が著しく、たんぱく質やカルシウムの 必要量が体重あたりでは成人より多くなります。3回の食事だけでは 必要な栄養を摂りきれないため、間食(おやつ)も栄養補給の一部として重要です。 食習慣や味覚の基礎が形成される時期でもあります。
学童期・思春期
身体活動が活発になり、エネルギー必要量が増加します。 学校給食を通じた食育も重要な役割を果たします。
第二次性徴による急激な成長に伴い、栄養必要量が最大となる時期です。 特に鉄やカルシウムの必要量が増加します。女子は月経による鉄損失があるため、 鉄欠乏性貧血に注意が必要です。
成人期
身体が完成し、維持期に入る時期です。この時期の食生活が生活習慣病の 発症に大きく影響します。エネルギーの過剰摂取を避け、適正体重を 維持することが重要です。塩分や脂質の摂りすぎに注意し、 バランスのとれた食事を心がけます。
高齢期
65歳以上の時期です。基礎代謝量の低下、消化吸収能力の低下、 咀嚼・嚥下機能の低下などが起こります。 低栄養(フレイル)の予防のため、十分なたんぱく質摂取が重要です。
- 骨粗しょう症予防のためカルシウムとビタミンDの摂取
- 脱水予防のため十分な水分摂取
- 低栄養予防のためたんぱく質の確保
- 咀嚼・嚥下しやすい食事形態の工夫
試験のポイント
- ・妊娠期は葉酸の十分な摂取が重要
- ・離乳食の開始は生後5〜6か月頃
- ・思春期は栄養必要量が最大となる時期
- ・高齢期は低栄養(フレイル)予防が重要
5病態と栄養
食事・栄養は病気の予防や治療に重要な役割を果たします。 生活習慣病をはじめとする様々な疾患において、適切な栄養管理が求められます。
肥満とやせ
BMI(体格指数)が25以上の状態。BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)²で計算します。 内臓脂肪型肥満は生活習慣病のリスクを高めます。 エネルギー摂取の適正化と運動が基本的な対策です。
BMIが18.5未満の状態。若い女性に多く見られます。 低栄養による免疫力低下、骨量減少、月経不順などのリスクがあります。
糖尿病
インスリンの作用不足により高血糖となる疾患です。 空腹時血糖126mg/dL以上、またはHbA1c 6.5%以上で診断されます。
- 適正なエネルギー量を摂取する
- 炭水化物、たんぱく質、脂質をバランスよく摂る
- 食物繊維を多く摂る
- 規則正しい食事時間を守る
高血圧
収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の状態です。 脳卒中や心臓病のリスクを高めます。
- 減塩(1日6g未満を目標)
- カリウムを多く含む野菜・果物を摂る
- 適正体重の維持
- アルコールの制限
脂質異常症
血中のLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)の いずれかが異常値を示す状態です。動脈硬化のリスクを高めます。
- LDLコレステロール 140mg/dL以上
- HDLコレステロール 40mg/dL未満
- トリグリセリド 150mg/dL以上
- 飽和脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸を摂る
- コレステロールの摂取を控える
- 食物繊維を多く摂る
腎臓病
腎機能が低下した状態では、たんぱく質、塩分、カリウム、リンなどの 制限が必要になることがあります。腎臓の負担を軽減するため、 低たんぱく食が基本となります。
- たんぱく質の制限
- 塩分の制限
- カリウム・リンの制限(進行した場合)
- 十分なエネルギーの確保
貧血
最も多い貧血。鉄の摂取不足や吸収障害、出血などが原因。 レバー、赤身肉、小松菜などの鉄を多く含む食品を摂り、 ビタミンCと一緒に摂ると吸収が促進されます。
ビタミンB₁₂や葉酸の欠乏により起こる貧血。 赤血球が正常より大きくなります。
骨粗しょう症
骨量が減少し、骨がもろくなる疾患です。閉経後の女性に多く見られます。 予防にはカルシウムとビタミンDの十分な摂取、適度な運動が重要です。
食物アレルギー
特定の食物に対する免疫反応により起こるアレルギー症状です。 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かにが特定原材料として 表示義務があります。原因食物の除去と代替食品の活用が基本です。
試験のポイント
- ・BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)²、25以上が肥満
- ・糖尿病の診断基準(空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上)
- ・高血圧の食事療法は減塩が基本(1日6g未満)
- ・特定原材料7品目を覚える